 だが、よく考えてもらいたい。「OJT、OJT」と言うが、あなたが関わっている業務は適切な教育体制が必要ないほど単純な作業だろうか。
恐らくいろんな要素がからんだ複雑な仕事に違いない。仮にルーティーンの仕事量が多くても、その「仕事のやり方」を高めるにはOJTのみで対応できるわけが無い。なぜなら人間は無から何かを生み出すことはできない。常に先人たちの機知を活かしながら日進月歩で進化している。カイゼンの方法を学ばずに「仕事の効率化」を期待することは、物理法則を学ばずに作ったスペースシャトルが問題無く打ちあがることを期待することと同じことだ。したがって、OJTで自発的成長を望むのは、経営をアウトソースすることと同じくらい企業のあり方として間違っている。
あなたたちが仕事をする上で、無計画で業務に取り組む人はいないだろう。無計画で行った場合の結果は、悲惨であることは見えている。それと同じように、無計画で教育しようとしても結果は悲惨であることは見えている。体系立てた研修を行うのは、もはや企業の宿命なのだ。 |
 「教育、研修より採用に時間もお金をかけた方が効果的」。これも正しい、いや正確には正しかった。少子化が起きる前は、労働力が豊富で、人材に教育、研修をするより、採用に時間もお金もかけた方がより効果的だった、これは否定できない。
だが、もはや労働力が豊富な時代も終わりを告げ、公の教育体制は崩壊し、人口減少化時代だ。労働人口が減少し、教育レベルが下がっているのに、採用に時間もお金もかけるというのはラットレースだ。今まで以上に採用費がかかり、それでいて入ってくる人間の能力は低下する一方、だとすると入社の門戸を幅広く開き、自分たちの企業で活躍したいという意志がある人間に教育を施すことの方が有益なことは言うまでも無い。経営企画室、人事部門はもう一度「教育研修費<採用費」の矛盾をどうしないといけないか考えなくてはいけない。
「研修する時間がない。」、そう言っている人を実際に見てみると、確かに教育、研修をする時間というのは取れそうも無い。だが、思慮が欠けていないだろうか。なぜそのような事態になっているかと考えたことはあるだろうか。概して、そのような事態を招いているのは数ヶ月前、数週間前の自分が無茶なスケジューリングをしていることが原因であって、その他の外部要因ではない。その時点で業務が繁忙になり、手が回らなくなることを回避するための予防を怠っていたから、「忙しく、何もできない。」という今があるのだ。
「繁忙期の意思決定方法」等を社内でルール化、またはその予防のための研修を行っておらず、「忙しいから研修ができない」というのは本末転倒であり、どこかで、その「忙しいスパイラル」を断ち切らなければならない。断ち切るのが、「いつか」なのか、「今」なのかが問題だ。ダイエットを明日から行おうとして、実際にできた出来た試しは聞いたことがない。
もしそんな話を聞いたことがあれば、ちょっと太めの私にも教えてもらいたいものだ。 |